電力データ活用・ビジネス利用の動向(2022.2.13)

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電力データの活用・ビジネス利用が2022年4月から解禁

この記事では、電力データとそれを活用したビジネスの動向について、解説します。

電力データとは、各家庭の電力量計などに蓄積された、使用状況に関するデータです。電力量計とは、電力の消費量を測る装置です。この測定結果から、皆さんがお支払いしている月々の電気料金が決定します。

実は、この「電力データ」は、ビジネスの種になります。なぜなら、電力データを調べると、人々の生活パターンや工場の稼働状況など、様々なことが分かるためです。

ただ、電力量計は、旧大手電力会社(東京電力、関西電力、中部電力、…)の持ち物です。そのため、これまでは他の一般企業がこのデータをGETすることはできませんでした。

しかし、2022年4月から、電気事業法という法律が改正され、一般企業も有償で電力データを入手できるようになります。

この記事では、上記のような電力データとそのビジネスの最新動向について説明していきます。

目次

目次
  1. 一体、電力データとは何か?
  2.  ・電力データを作り出すスマートメータ
     ・スマートメータの解説記事

  3. 電力データを活用したビジネスとは
  4.  ・電力データ活用ビジネスの例
     ・電力データを利用した新しいサービスの将来像

  5. 電力データ活用の動向
  6.  ・2022年4月からの改正電気事業法の施行
     ・電力データを取り扱う認定協会設立の動向
     ・認定協会設立スケジュール

  7. まとめ

電力データのビジネス利用が2022年4月から解禁

一体、電力データとは何か?

電力データを生み出す電力量計
電力量計(左:アナログ式 右:デジタル式「スマートメーター」)

そもそも「電力データ」とは、各家庭に置かれた電力量計などに蓄積されている、電気を使用する方の電気使用状況に関するデータです。電力量計は、電力の消費量を測る装置です。この測定結果から、皆さんがお支払いしている月々の電気料金が決定します。

なお、電力量計の写真を上に掲載しました。
電力量計は、少し前までは左側の「アナログ式」と呼ばれるタイプのものが主流でした。「アナログ式」には、電力データは保存されていません。


現在は、技術の進歩により、右側の「デジタル式」が作られて主流となっています。電力データは、この「デジタル式」電力量計から作り出されます。

皆さんのご自宅にも1つは繋がっているはずですので、探してみて下さい。

電力データを作り出すスマートメータ

デジタル式の電力量計は、「スマートメーター」と呼ばれています。
スマートメーターの良いところは、電力の使用状況を、パソコンなどで扱える「電力データ」として保存していること。そして、この電力データを、電力会社まで無線で送信してくれることです。

スマートメーターが、電力データを無線で電力会社まで送ってくれるため、電力会社は1軒1軒のご家庭を訪問しなくても、電気代の計算ができるようになりました。

古いアナログ式では、電力データを無線で飛ばすことはできませんでした。そのため昔は、月々の電気使用料金を調べるためには、1軒1軒のご家庭を電力会社の方が歩いて訪問して、アナログ式電力量計を読み取らなければいけませんでした。

アナログ式電力量計に替わって、デジタル式のスマートメーターが普及し、電力データが作り出されるようになりました。また、これにより、電力会社が1軒1軒の家庭へ電力量計を調査する手間がなくなりました。

スマートメータの解説記事

スマートメーターの普及状況については、以下のニュース記事を参考としてください。

2021年5月10日東電PG、エリア内の次世代量計設置が完了/電力データ活用強化

また、「アナログ式誘導型電力量計」と「スマートメーター」の違いについては、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)がホームページで解説しています。以下の図をクリックして、アクセスしてみてください。

電力データを生み出すスマートメーターの解説
解説 スマートメーター

【引用: 一般社団法人日本電機工業会(JEMA) ホームページより】

JEMA 一般社団法人 日本電機工業会

電力データを活用したビジネスとは

電力データはビジネスの種になると言われてます。なぜなら、電力データには、人々の生活リズムが反映されるためです。

例えば、一人暮らしのサラリーマンの場合、7時に起きて出社の支度を始めるとします。すると、その起床時間から、照明とテレビを付けて、電気ポットでお湯を沸かしながら、オーブンや電子レンジでパン・ごはんを温める。家電を一気に使い始めるので、7時以降の電力の使用量が急激に増えます。そして、家を出るときには、冷蔵庫を除くほとんどの家電の電源がOFFになります。これにより、電力の使用がほとんどなくなります。

また、生活パターンは家族構成によっても異なりますから、電力の使用状況も変わります。逆に、電力データを調べると、その家庭の生活パターンや家族構成などが見えてくるのです。

このような電力データは、1軒分だけだとあまり利用の余地がありません。が、数万軒分以上などといった数を集めることで、ビックデータとなり、様々な活用の余地が見えてきます

電力データ活用ビジネスの例

電力データを活用すると、どんなビジネス・サービスにつなげられるか。これについては、2021年度に開催された、経済産業省の「電力データ活用の在り方勉強会・検討会」でも議論されました。

その勉強会のときの資料の抜粋を、以下に示します。

ここの資料のとおり、電力データを活用すれば、人々の生活パターンに基づく次のようなサービス分野に、特に有意な情報を供すると考えられています。

  • 広告・マーケティング
  • 健康管理
  • 日常生活に連動したゲーム・アプリ

その他にも、次のような地域事業にも生かせると考えられています。

  • 防災計画・避難計画の高度化
  • 地域防犯活動
  • ご老人のみまもり

電力データを活用したサービスの例
電力データを活用したサービスの例

引用元:電力データ活用の在り方勉強会(経済産業省、5/28及び6/3開催)
【資料3】電力データ活用検討委員会での検討状況の報告

電力データ活用の在り方勉強会及び検討会

電力データを利用した新しいサービスの将来像

電力データは、それ単体で利用するだけでなく、他のデータと組み合わせることで、サービスが広がります。その可能性についての議論も始まっており、以下の資料のように検討が行われています。

スマートメーターデータ(電力データ)活用のさらなる可能性

引用元:電力データ活用の在り方勉強会(経済産業省、5/28及び6/3開催)
【資料2】勉強会趣旨説明電力データ活用制度概要

つまり、どのようなサービスが生まれるかは、各企業のアイデア勝負によります。そのため、実は多くの一般企業が、電力データの使い方・新しいビジネスへどう使っていくかを、今まさに考えているのです。

電力データ活用の動向

ここまでで説明したとおり、電力データは多数の新しいサービスを生む可能性を秘めています。

しかし、電力データは、これまで電気事業法という法律において、その利用目的が災害・復旧等の有事にほとんど制限されていました。

また、スマートメーターは大手電力会社(東京電力、関西電力、…)が設置したため、大手電力会社の持ち物です。それに保存されている電力データも、電力会社だけが知ることができる情報だったのです。

ですが、そのような法的ルールも、2022年4月から変更されます。ここでは、そのルール改正も含めて、電力データとその活用の動向について記述します。

2022年4月からの改正電気事業法の施行

2022年4月から、改正された「電気事業法」という法律が施行されます。
この法律により、電気・電力に関する制度が幾つか変更されることになります。その1つに、電力データの活用が含まれています。

2022年4月よりも前、つまりこれまでは、電力データはやはりスマートメーターを設置した大手電力会社のものであり、そのデータを外部に提供するとすれば、例えば災害復旧などの目的で地方公共団体や自衛隊等に限られていました。

これが、2022年4月以降になると、大きく変わります。
2022年4月からは、電気事業の緊急時以外の目的でも電力データを活用できることが法律で認められ、平時の更なる電力データ活用のための制度の措置が施行されます。

その背景としてはやはり、社会課題解決や新たな付加価値の創出に向けて、様々な分野での電力データ活用が期待されていたようです。

参照資料: 平時の電力データ活用について(経済産業省)

電力データを取り扱う認定協会設立の動向

電力データを利用した新しい事業・サービスの実施に向けて、多くの一般企業は改正法施工を待っています。

一方で、電力データは元々、スマートメーターを設置した事業者のものです。つまり、大手電力会社のものであることに変わりはありません。また、各家庭からの電力データはある意味個人情報を含んでいます。以上を配慮して、取り扱いには十分注意されなければいけないことが課題でした。

残りの課題解決のため、電力データは、以下の図のルートでの提供が検討されています。
そのルートとは、まず、国が認める認定協会を設立します。そして、大手電力会社から提供される電力データを、認定協会を仲介し、一般企業に提供するようなルートです(以下の図を参照)。

認定協会制度について

参照資料:第7回 電力データ活用検討委員会 認定協会設立に向けた現在の検討状況
(2021年11月30日 グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合)

認定協会設立スケジュール

認定協会の設立については、現在「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」が経済産業省での議論を引き継ぎ、主体となって設立を目指しています。

最新の資料:第8回 電力データ活用検討委員会 認定協会設立に向けた現在の検討状況(2022年1月26日開催)によれば、認定協会の設立は2022年度第1四半期を目標と設定されています。そして認定協会による電力データの提供開始は、2023年度の初頭が目標とされています。

それに向けて、認定協会参加者による出資金や、電力データ仕様の話を詰めているようです。

まとめ

この記事では、電力データ活用ビジネスの動向について解説しました。

電力データの一般企業による利用は目前に控えています。2022年4月には改正電気事業法が施行されます。また、電力データを仲介する認定協会も設立検討も進んでいます。

その後、電力データの一般企業への提供が、認定協会を介して行われ始めると、次々に新しいサービスが生まれることが期待されます。

まさにこれからが大注目なのが「電力データ活用ビジネス」なのです。

参考リンク

一般社団法人日本電機工業会 ホームページ

一般社団法人日本電機工業会 キーワード解説ページ
(HEMS, スマートメーター, 電力データ活用関連のキーワード)

次世代スマートメーター制度検討会(経済産業省)

スマートメーター仕様検討ワーキンググループ(経済産業省)

グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合 ホームページ