記事の概要
今回の記事は、前回の記事:「2021年7月2日 ニュース記事 二酸化炭素(CO2)は、これからは削減したぶんだけお金になる!」で取り上げた「カーボンプライシング」について、その基本的な用語や、動向について解説していきたいと思います!
動向解説!カーボンプライシング
カーボンプライシングとは?
カーボンプライシングとは、炭素の排出量に比例した費用負担を発生させる施策。
代表的に、★ 炭素税 と、★ 排出量取引制度 の 2種類の施策が存在。
★ 炭素税
炭素の単位排出量に対する税率。
★ 排出量取引制度 (ETS: Emissions Trading System)
日本・各国政府などが、その組織体全体の排出上限(キャップという。日本は、日本だけでこの量以上は二酸化炭素を出さないよ)を決めたときに、日本の各会社ごとにも、二酸化炭素の排出量の上限(排出枠;キャップ)が決まる。
各会社が、その排出限である排出枠以内に、炭素の排出を抑えることができればよい。が、ある社(例えばA社とする)が排出枠以上に炭素を排出してしまったら、A社は排出枠が不足するということになる。
そこで、排出枠の取引が必要になる、ということである。
ETSには、
・政府が無償で排出枠を割り当てるケース と、
・オークションにより有償で割り当てる方式 がある。
オークションの場合、排出枠の価格は変動する。
カーボンプライシングの特徴
炭素排出過多な時期には,税収が多くなる。一方、カーボンニュートラル実現に向けて、政策が功を奏し、炭素排出がかなり抑制された将来の時期においては、二酸化炭素の排出量はほとんどなくなってくるので、課税者の負担及び税収もゼロに近づいていく。
世界の炭素税価格の比較
日本は現在、約300 円/tCO2 と 先進国内でもかなり税金が安い。
ヨーロッパの国々は、数千円台/tCO2 をつけているところもある。
炭素税率は、世界的に年々増加しつつある。今後も、高くなる可能性あり。
EU-ETSと、その動向について
EU-ETSは、欧州連合域内(EU圏内)の排出量取引制度。2005年に導入され既に運用されている、世界で最も歴史の長いETS制度。
なお、EU-ETSではここ1年で排出枠の価格が1.5倍程度に上昇した。昨年12月11日の欧州理事会における2030年削減目標の合意が価格上昇に拍車をかけた。
EUの炭素国境調整措置の検討状況
概要: 炭素規制が緩いEU域外からの輸入品に、新たな関税を課す等の措置。
EU域外の低炭素化と、域内外の産業の競争公正性確保のため、このような措置が検討されており、2021年3月10日に、欧州議会本会議で賛成多数で可決された。
対象: 発電・セメント・鉄鋼・アルミ・石油精製・化学・肥料 等の、エネルギー多消費型産業に対して。
導入時期: 2023年1月1日までに
インターナルカーボンプライシングについて
インターナルカーボンプライシングとは、企業が社内で独自に、各部門ごとなどでCO2の排出量に
・仮想的に価格を設定(「Shadow price」)したり、
・CO2削減量毎のかかったコストを計算し(「Implicit carbon price」)たり、
・各部署の排出量毎に、各部署から費用を徴収し(「Internal fee」)たりする、社内でのCO2排出抑制に向けた努力活動。
2020年8月時点で、日本企業101社がインターナルカーボンプライシングを導入済み。大手電力会社も含まれる。