記事の概要
今回の記事は、前回の記事:2021年8月13日 ニュース記事 これからの節電、キーワードは「エネマネ」!Nature社のツールが面白そう! で取り上げた「エネマネ」について、これを実現するための技術ルールである ECHONET というものを紹介したいと思います。
「エネマネ」とは? おさらい
前回の記事で説明しましたが、電気(つまりエネルギー)の使用状況を細かく知って、無駄遣いを減らすことを「エネルギーマネジメント」、略して「エネマネ」といいます。
エネマネをすることは、電気代の大幅な節約につながります。
エネマネは、工場やビルなどでは既によく行われていますが、センサーなどの細かい装置をたくさん工場・ビル内に取り付けて監視するのが普通でした。そんな面倒なく、コンセントに取り付けるだけで、エネマネを家庭できるようにしてくれるのが、Nature株式会社の製品「Nature Remo E」です、というのを前回の記事で紹介しました。
ただ、これだけでは、家庭でのエネマネについてまだピン!とくる人は少ないかもしれません。何をすることが家庭のエネマネなのか?もう少し、細かく解説していきます。
家庭のエネマネとは?
家庭のエネマネは、主に次の①~④の4つのことを個々に行ったり、あるいは組み合わせて行ったりすることを言います。
① 使わない家電の電源を切ること
② 家電の力を弱めること
③ (深夜などの)安い時間帯の電力を活用すること
④ 家で作った電気を効率よく使うこと
エネマネと横文字を使っても、基本的にやることは、「使わない家電の電源を切ること」なんです。ただ、最近では家に太陽光発電や蓄電池を導入する家庭も増えてきたので、そういったところは③・④もできるようになります。
①~④について、もう少し詳しく解説します。
① 使わない家電の電源を切ること
例えば、
・人のいない部屋の照明を消すこと
・部屋に人がいないときは、その部屋のエアコンを切ること
・お湯が必要ないときは、給湯ポットの電源を切ること
などです。
電源を切る分、電気代がかからなくなるので、お金の節約ができます。
② 家電の力を弱めること
または、家電の力を弱めることも、エネマネになります。
例えば、
・効き過ぎのエアコンの設定温度を高くすること
・効き過ぎの暖房器具の強度を弱めること
家電の力を弱める分、電気の使用量が減り、電気代がかからなくなるので、これもお金の節約になります。
③ (深夜などの)安い時間帯の電力を上手く使うこと
電気代には、どんな電力小売会社と契約しているかにもよりますが、深夜帯の方が安かったりするのが一般的です。そこで、深夜の電気を使って、お風呂用のお湯を沸かして貯めるとか、あるいは蓄電池を持つ家庭であれば、蓄電池に深夜に電気を貯めて、電気代が高い時間帯にはその蓄電池から電気を使うと、電気代の節約になります。
④ 家で作った電気を効率よく使うこと
最近では、自宅に太陽光発電を取り付ける家庭も多くなってきました。太陽光発電は、晴れの日・晴れの時間だけ発電できるのですが、そのときに作ったすべての電気をいつも使いきれるわけではありません。ですが、蓄電池があれば、作った電気を一旦貯めておくことができるので、うまく使えば、使い切ることができるようになります。
このように、電気を自給自足できる時間が長ければ、電力会社の電気に頼ることが減るので電気代を節約することができるようになります。
また、最近では、電気自動車が普及してきているので、電気自動車の中の蓄電池に充電するという選択肢もあります。
HEMSを使ってエネマネを自動化
①~④は、組み合わせて行えば行うほど、「賢いエネマネ」になっていき、節約できる分が増えていきます。
しかしながら、組み合わせれば組み合わせるほど、家電・太陽光・蓄電池のコントロールが複雑になって、人間の手ですべてを行うことが難しくなっていくという難点があります。
そんな困難を解決してくれるのが、「HEMS」というシステムです。これは、Home Energy Management Systemの略で、まさに家庭のエネマネをやってくれるものです。
普通はタブレットのような液晶パネルになっているものを使って、これを家の中に設置して、エネマネをします。このタブレットや液晶パネルを、「HEMSコントローラー」といいます。
◆ 図の引用元: HEMSコントローラー|Sky株式会社 (skygroup.jp)
https://www.skygroup.jp/software/energy/energy03.html
HEMSコントローラーは、そのHEMSコントローラーと通信(Wi-Fiなど)がつながっている家電・太陽光発電・蓄電池などの電気を自動的に制御して、勝手にエネマネをやってくれます。また、どの時間帯にどんな電気の使われ方をしているかという情報も取ってくれたりするので、その情報を見たり、その情報からエネマネの仕方を変えてくれたりもします。
HEMSコントローラーによっては、スマホと連携することで、家電の状態を家の外からでもチェックしたり、操作できたりします。また、スマートスピーカーとHEMSコントローラーがつながることで、声で家の中の家電を操作できるようにもなります。
HEMSコントローラーの具体例として、パナソニック社は「AiSEG2」というものを販売しています。その紹介ページに、HEMSコントローラーでできることが出ていますので、参考にしてください。
◆ 図の引用元:AiSEG2でできること
https://www2.panasonic.biz/ls/densetsu/aiseg/merit/
◆ AiSEG2の具体的な機能
https://www2.panasonic.biz/ls/densetsu/aiseg/merit/convenien.html#aiseg
HEMSは本当に便利か?
上で紹介した機能やリンクを見ると、HEMS結構便利じゃん!と思われるかもしれませんが、実は厄介な点もあります。
それは、HEMSコントローラーが、他社の家電にあまり対応していないこと、です。
つまり、例えばパナソニック製のHEMSコントローラーであれば、パナソニック製の家電と通信がつながって、エネマネをすることができます。しかし、パナソニック製以外の家電、例えば、日立製や東芝製の家電などとは上手くつながらず、エネマネができません。
じゃあ、日立製とか東芝製の家電は捨てて、全部パナソニック製の通信ができる家電に買い替えることができればいいのですが、それってすごくお金がかかる話になります。
普通のおうちだと、「うちの家電は全部パナソニック製にしよう」とか「日立製にしよう」とかいったことをやってはいないと思います。
本当は、パナソニックも日立も東芝も、すべての家電メーカーが協力して、お互いに家電機器の情報を教え合ってくれればいいのですが、各社秘密にしたい技術部分があるので、そういうわけにもいきません。
このような事情から、HEMSが他社に対応せず、家庭に広まりにくいという実態があります。
他社の家電とつながるための「ECHONET」
上記の「他社とつながらない問題」については、どうしようもないのかというと、そうでもありません。
たくさんの家電メーカーが集まって、打ち合わせを重ねながら作った、「ECHONET」という家電を動かすルールがあります。
ECHONETは、様々な家電メーカーがこのルールのことを知っているので、各社がECHONETに対応している家電製品も作ったりしています。これらの家電製品は、ECHONETに対応しているリモコンやHEMSコントローラー・スマホアプリなどなら、どの家電メーカーの製品かに関係なく動かすことができます。
◆ 参考リンク:トップページ | ECHONET
https://echonet.jp/
この記事の最初にも出てきたNatureの製品「Nature Remo E」は、このECHONETというルールを上手く使って、どの家電メーカーの製品かに関係なくエネマネができるツールだったのです。
正直、大人の事情で、大企業ほど他社の製品は動かしたくないとか、他社より自社の製品が売れて欲しいと考えていたりするので、せっかくECHONETというルールがあっても、なかなかそれを使ったサービスが広まらないというのが現状です。
しかし、これからの時代、他社の製品と連携しないと、家庭でのエネマネは普及しないので、今後はECHONETを活用したサービスが普及していくと思います。
「ECHONET」というキーワードは、是非、覚えておきましょう!
(補足)「ECHONET」は、国際規格になっている
ECHONETは、日本が作り上げた技術ルールの1つですが、これを世界のルールの1つにもするために活動し、その結果、IECという国際規格として認められています。
◆ IEC 62394:2017 Service diagnostic interface for consumer electronics products and networks – Implementation for ECHONET
https://webstore.iec.ch/publication/32738
◆ ISO/IEC 14543-4-3:2015 Information technology — Home Electronic Systems (HES) architecture — Part 4-3: Application layer interface to lower communications layers for network enhanced control devices of HES Class 1
https://www.iso.org/standard/63216.html